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上海株式市場からの教訓 (Simon and Garfunkel) [マネー]

上海株式市場からの教訓

上海総合指数201507.gif

7月28日(火)
上海が、27日ふたたび8.5%の暴落。英「Finanncial Times.com」アジア版をはじめ、世界のトップ記事を飾った。不安が的中してしまった格好だ。

上のチャート(週足、6ヵ月間。移動平均線:13, 26)から、6月12日の最高値(5,178ポイント)から7月9日の最安値(3,373)までの暴落が見える。その後、7月24日(4,184ポイント)まで指数を押し戻したものの、26週移動平均線に頭を押さえられて、昨日、今年二番目の急落がやってきた。まさに国家と市場の死闘である。

ここには載せないが日足チャートで見ると面白いことが分かる。前回の下げも昨日の下げも、ピタリと200日移動平均線でサポートされているのだ。200日線の重要さは、こういうパニック時に実感させられることが多い。

これからの考え方は、下方については200日線で下げ止まるのかどうか、反発については26週移動平均線をブレークできるかかどうか、がポイントだ。中国では大学生がこの相場に苦戦していると聞く。学生を応援する立場としては、なんとか耐え抜いてほしいと願わずにはいられない。

 

 

Simon and Gerfunkel, Homeward Bound 

前回「上海の期待と不安」で生活費や授業料を株の信用取引で賄おうとした中国の大学生たちが心配だと書いた。では、心配なら何ができるのか、この失敗から何を学ぶべきかを書きたい。

1.シナリオ能力
投資を確率に賭ける賭博ではなく「職業としての投資」を考える。つまり、目の前の資金を運に委ねるのではなく、長期的に社会を豊かにすることを考える、それが投資の本質だ。この立場から言えるのは、短期的に目の前の事だけ見ていてはいけないということだ。この出来事が何につながるのかをいつも深掘りすることだ。

たとえ今はつまらない事に思えるし、周囲もそう確信しているテーマでも、将来は大事になるのではないか、そう考えると、目の前の出来事を長期的な文脈の中で理解しなければならないことがわかる。これを僕はシナリオ能力と呼んでいる。シナリオ能力を磨くと、流行や風評や市場のオーバーシュートなどに惑わされずに、自分自身の価値基準で目の前の仕事や投資ができるようになる。

そして自分の描いたシナリオに、人は何度も裏切られる。神様ではないので当たり前だ。大事なのは、シナリオが甘かったときにその原因を客観的に分析することだ。失敗分析ノートを何冊持っているかで投資効率は高まるだろう。そして、シナリオの品質は、勉強量に比例する。これは断言できる。

たとえば、かつて民主党政権時代、環境エネルギーが政策の焦点になった。それを知っている人はたとえば太陽光パネル関連の企業に投資した。この時点で、勉強量が投資効率に影響した。さらにある時点から太陽光パネル関連の株価が重くなっていった。RSIなどの指標では買い場が到来した。しかし中国の量産や太陽光パネルのポリシリコンという原材料マーケットまで深掘りしていた人は、それが買い場ではないことを知って、売り側に回って利を得たはずだ。 

シナリオのレベルによって、投資スパン、投資スタイルも変わる。デイトレーダー(5分足チャートの投資家)はチャートだけ読めればいいのかもしれない(実践したことがあまりないので断言できないが)。スイングトレーダー(日足で投資)はもっと知識が必要だ。バフェットのようなロング主体の「売らない」投資家は徹底したマクロ経済の読みと、ミクロな企業評価ができなければ塩漬け株を買い重ねるだけになる。

投資の理想はバフェットだろうが、僕には自信がないし、若い中国の学生達にお勧めする勇気もない。実際には、目標はつねに勉強して、中期的なスイングトレードだと思っている。投資は賭博ではない、やはり理論がある。みんな儲けているからやってみよう、などという安易な投資は理論がない賭博に過ぎない。自分の運にすべてを賭けて、とんでもないリスクを背負う愚かな行為だ。

シナリオのない投資とはどういうものか。どこからか高い金利で100万円借りてきて、「さあこいつを10倍にしてやろうかな、あそこが儲かるらしい」、と評判だけで、入ったこともない路地裏の小さな店の黒いドアを開けて入っていくようなものだ。その「マーケット」という店の中にはあなたの資金を増やしてくれる人たちが待っているのだろうか。それとも大切な資金をあなたからあっというまに奪い取る人々だろうか。あなたはそんな賭博に人生を賭けてはいけない。

シナリオのない人は、他人を信じやすい。友人、証券会社、銀行、新聞、雑誌の他人の論を疑わずに、大切な自分の資金をリスクにさらしてしまう。自分でシナリオを作れないから、他人のシナリオに乗っかるしか方法がないからだ。

2.心理戦

しかしどんなに勉強しても、どんなに知識を増やしても、勝てない場合があるのが投資というものだ。心理戦という別の側面も左右するからだ。「期待」に誘われない。そして「不安」に負けない。言うのは簡単なのだが、実際には難しい。

いつも冷静に判断する癖をつけること。感情の起伏、気持ちのボラティリティを減らす努力をする。喜びすぎず、沈みすぎない。恐怖におびえない、怒りを抑制する。これも難しいが、場慣れというか訓練だと思う。眠れない、胃痛、腰痛、頭痛、そういうストレス障害は訓練中なのだから当たり前と考える。

自分がエントリーしたときの価格を標準に判断しないことも大切だ。中国株価の暴落のさなか、大学生たちは自分が買った値段を基準に判断して、逃げ遅れたと推測する。こんなに損してしまったからもう売れない、また上がるのを待とう、そう考えるあいだに強制清算と追い証がくる。覚えておいてほしい、マーケットはあなたがいくらで買ったのかはまったく気にしないで変動する。下がるときはぞっとするほど下がるし、高騰するときは怖いほど上がる、そういうものだ。

それがいやなら、一流の投資対象が三流の価格に暴落するまでじっと待つことだ。これもなかなかできない。ちなみにバフェットはIBMを買うまで25年間アニュアルレポートを読み続けてじっとチャンスを待った。2000年前後のITバブルの時は、いちはやく利確して3年間もキャッシュを保持した。彼がエントリーしたのはITバブルが暴落した後だ。リーマンショックの時もそうだった。中国には早くから投資しているから、もちろん暴落の前にとっくに利確しているはずだ。

人間である以上、最底値で買うことも、最高値で売ることも不可能だ。冷静に、自分のシナリオに従ってエントリーとエクジットを繰り返せばいい。「もっと安く買えたのに」とか「売ったらもっと高くなった」などで感情を乱されてはいけない。

大きなロスを出さないこと、信用取引をしないこと、これも若い人に言いたい。誰でも大きなロスを出すと、冷静ではいられなくなる。すでに心理戦で負けているから、そういう状態で正しい判断ができるはずがない。小さなロスカットは当たり前と考えて、さらに自分のシナリオ能力を高める勉強を重ねればいい。授業料を払ったと思うことだ。ロスを取りもどそうとして大きく投資してはならない。最初のミスではなく、それを焦って取りもどそうとする二番目の判断が致命傷になることも覚えておいてほしい。

中国の大学生がこの日本語のブログを読んでくれるとは期待していないが、読める人は若いのだから絶望したり、開き直ったりせず、今回の失敗を次に活かしてほしい。もっと勉強して人生に成功してもらいたい、と心から祈ってやまない。 


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