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日本の大学は就職予備校か Kenny Burrell [大学教育]

kenny_blue_lights_2.jpg
Kenny Burrell / Blue Lights 2

2010年8月12日(木曜日)
ケニー・バレルのジャケットのアンディ・ウォーホールの2番目のものがこれです。
ラインの洗練さは前に紹介したアルバムジャケットと同じだろうけれども、やはり前のほうにちょっと分がある。

今日のブログのテーマは「日本の大学は就職予備校か」というもの。
問題は、大学だけに限らない、高校でも同じ課題がある。

高校、とくに工業高校や商業高校を考えてみるとよくわかるのだが、「進路指導」の部署があって、そこの先生たちは生徒の就職のために熱心に会社 を訪ね歩く。高校の就職力こそ、その地域や生徒にとっての、高校の価値そのものだ。戦前から続くこういう「就職予備校としての高校」という状況を批判する 人はいても、否定はできない。

では大学はどうだろうか。「就職部」最近では「キャリアセンター」が高校の「進路指導部」の機能を果たす。マスコミは、各大学の「就職力ランキング」を発表する。それは出口の偏差値だ。受験生は入り口の偏差値と出口の偏差値をくらべて、志望校を決める。

「狭き門より入れ」と言う。
日 本の大学の場合は、いくら入り口の偏差値が高くても、出口の偏差値が低いところは、長期的には受験生を失っていく。実質倍率というが、現在、私立大学で 10倍(受験生10人に対して合格者1人)以上の大学はまちがいなく名門だ。ちなみに入試制度がまったくちがうから比較にならないが、ハーバード大学は 40倍だそうだ。
 
日本の大学では実質倍率が2どころか1を切る大学もある。
大学は出口の偏差値を高くしようと努力を始めた。つまり、4年間で、学生に企業が求めるような付加価値をつけようという努力だ。だから最近の大学のカリキュラム改革は、どこの大学でも、そういう方向をめざすことになる。これは時代の要求というものだろう。
 
さて、学生に企業が求めるような付加価値をつける努力を、大学の「就職予備校」化と呼べるのだろうか?
 
大学は「学問」をするところだから,そんな努力は不要だ,という見解もあろう。就職部を例にとってみると、
ハーバードもハイデルベルクも、欧米の大学には「就職部」はないか,ごく形式的な部署だ。日本の大学のように、企業と学生の窓口となる部署はない。
 
な ぜなら、欧米の企業は,学位がとれるかどうかもわからない学生と「内定」という契約を結ぶことはないからだ。日本の大学で学んでいる某フランス人の学生も 「就職は学位を取ってから活動します」と言って論文に専念している。グローバル・スタンダードは、大学が就職予備校になることではなく、その大学の学位が 企業からみて価値があることだ。
 
しかし,日本社会では「学校」というものは「教育」と「企業」という2つ の制度を結ぶ「窓口」の機能を果たしてきたし,そうすべきだという社会規範がまだある。就職力という機能を果たしている限り,日本の大学は「会社では役に 立たない知識」を教え,あげくのはてに「四年生幼稚園」などと蔑視されても笑っていられた。また社会もそういう大学を許してきた、学生が就職できる限りで は。
 
しかし昨今,学校の就職力は機能不全に陥ってきた。3月の卒業式に出席する学生のうち,正社員の内定を持っている実質率は,各大学のキャリアセンターが公表しているよりも低いはずだ。社会は,期待を裏切る大学をもはや許してはおかないだろう。
 
日本社会は甘えの社会だと言うが,規範を破るとおそろしい社会でもある。
「終身雇用」の法律はないが社会規範として拘束力があり,それを破ると会社も経営者もマスコミや社会からたたかれる。
就 職力を失った大学はどうなるだろうか。近いうちに,そういう大学は社会からバッシングを受けるようになるだろう。日本社会は一度バッシングを始めると,政 治家だろうが,芸能人だろうが,名門企業だろうが,徹底的にいためつける習性をもっている。就職機能がなくなった大学から倒産(実質倍率1以下)していく だろうし,社会はそれを黙殺するはずだ。
 
大学教育とは何か。「就職予備校」というのは褒め言葉だったとしたら、卒業しても3割は正社員になれないとしたら,日本の大学は学生に何を教えるべきなのか。
 
そろそろ正念場だ。大学にのんびり考えている時間はあまり,ない。


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履歴書の添え状

いつも楽しく観ております。
また遊びにきます。
ありがとうございます。
by 履歴書の添え状 (2010-09-01 00:37) 

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