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ビットコイン狂騒曲 [マネー]

ビットコイン狂騒曲


2018年1月28日(日)

40年ぶりとかの寒い日が続いている。先週、大雪の降った日の帰り道、雪で冷え切った風に寒さで身体がふるえた。

ビットコイン(仮想通貨)騒動はもっと寒い。最初に中国で買われて、規制されると、今度は日本で買われた。今、所有者の4割が日本人との報道もある。

100メートル競走のスタートで合図を待つアスリートたちのように、急騰した投資対象は耳を澄まして何かの合図を待っている。ピストルの代わりは、当局の規制、取引所の不正や閉鎖、何でもいい。合図が鳴るとランナーたちはいっせいに「売り」スタートとなる。これが急落だ。曲線的に上がる急騰とは対照的に、急落は直線的に落ちていく。

僕自身はこういう短距離競走には興味も能力もない、若い友人たちにはこの手の投資はやめるようアドバイスしてきた。

この狂躁曲をバンドワゴン効果という理論からその構成をみてみよう。

(続き)


第1楽章 allegro
バンド(楽隊)が楽しそうな音楽に乗って市中をパレード、バブルのスタートだ。そそっかしい人はバンドワゴンのすぐ後ろにくっついて歩く。面倒くさがりやは冷ややかにそれを眺めている。でもなんだか楽しそうだ、先にいい未来が待っている予感がする、そんなソナタ形式の主題が展開をまじえて聞こえてくる。
第2楽章 andante
ブームが少し静かになる。人々も少し落ち着きを取り戻し、まさに歩く速度(andante)でバンドを追うようになる。しかし熱狂が冷めたわけではない。最初のトップが終わり、次のブームに向けて力を溜めている時期(需給調整)。そそっかしい人はこの段階でブームが去ったと勘違いして、投資したものを売ってしまう。その一方で、かつて冷ややかだった人たち(こっちのほうがずっと多数派)は、価格が下がったので買い始め、バンドワゴンに加わって歩き始める。投資家の期待は静かに高まっていく。
第3章 adagio
少しづつ価格が戻ってくる。前に売ってしまった人たちが再エントリーする。ただし今度は前よりも一回りも二回りも大きい額を。なぜならばポケットにはまだ前に儲かった資金があるからだ。そして今度は確信的に大きな額をレバレッジをかけてつっこんでしまう。みんな気が大きくなっている。バンドも、マスコミも、評論家も勇気を出すような音楽ばかりになる。『私はこうして仮想通貨で10億円稼いだ』などという「サラリーマン」本が出るころだ。「億り人」が税金で青くなる前の時期は長くないのだが。
第4章 allegro con spirito
そしていよいよ最後の楽章。急テンポな展開。普段なら投資なんか興味もないという普通の人たちまでバンドのあとをついて歩いている。町中が浮かれていて、バンドもスピードを上げ始めた。バスに乗り遅れちゃいけない、とド素人が焦って身銭をバンドに投げ入れる。価格は前のトップに近くなり、チャートのダブルトップの完成だ。
〔転調〕ダブルトップで跳ね返された瞬間、何の予兆もなく、ただひたすら、直線的に急落を始める。バンドは町外れに到着。さようならと挨拶もせず、いつの間にか見えなくなっている。あれ僕のお金、全貯金をバンドに投げ入れたばっかりなのに、などと言ってももう手遅れだ。
「投資は自己責任で」などと言われてしまう。新聞も、テレビも、評論家も昨日までの笑顔は嘘のようだ。目つきが変わっている。「一日で30パーセントも下落。この二日間で60パーセントの急落です。金融庁も関心を持っている」などとニュースで言われても、自分の金は返ってこない。この曲の最後はかならずマイナーで終わるのが定石だ。
以上がバブルというシンフォニーの構成。
ちなみに、このバンドワゴン効果でいちばん損をするのはいちばん最後に投資した人だ。楽団の最後にくっついて歩いたド素人がカモになる仕組み。今回は日本の投資家だったようだ。
得をしたのは最初に投資した人だ。ただしそそっかしい人たちは、多くのバンドにくっついて歩いてきたから、たまたまこのバンドで儲けたとしても、トータルでは損を出している場合が多い。ましてダブルトップの前、第2楽章でさっさと売ってしまう人たちだから、長期的に投資でプラスになる確率は低い。これが中国の投資家だったろう。
仮想通貨投資でも(自己資金のいらない)アパート経営でも、バンドワゴンに乗ろうという人には、投資を始める前に古典的な教科書を読むべきだ。実際、僕もこの2冊から冷静な判断に戻ることができた経験がある。
・バートン・マルキール『ウォール街のランダム・ウォーカー』日経新聞出版社。
・チャールズ・エリス『敗者のゲーム』日経新聞出版社。
投資の成績は「勉強量」と「精神力」に比例する。そそっかしい人は、あわてるから失敗する。怠惰な人は日々の取引記録もつけず、四半期と年間の投資成績も管理しないから失敗する。自律心がない人は、他人に流されて売買するだけだから失敗する。そしてこれが僕だが、恐怖に弱い人は恐怖に耐えきれずに失敗する。
精神的に本当に強くなること、自律することが今の僕の課題。本当に強い人は客観的で、感情的にならない、また自分の弱点を知っているから他人に優しい。他人の欠点に怒りを感じるのは自分が未熟だからだ。投資は全部、自己責任。僕にとって、投資とは自分の弱さを見つめ直す自己修行だと考えている。

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