SSブログ

民主党政権の誤り:組織論の視点 [経営学〔組織と戦略〕]

民主党政権の誤り:組織論の視点

このブログでは、政治について意図的に避けてきた。「政治」ほどつまらないものはないと思っているからだ。今日は、前に書いた「経営学と社会学」の続編を書きたい。その意味での「政治」に触れる。

今回の選挙では予想通り与党は圧勝し、民主党は惨敗した。その理由は一言では要約できないとしても、「経営学と社会学」の視点から民主党政権の誤りは明らかだ。

diana krall quiet nights.jpg
Diana Krall/ Quiet Nights.

民主党の最大の誤りは官僚機構を軽視しすぎたことだ。大学でも病院でも、営利企業でも、バックオフィスの能力はフロントラインの業績に直結している。この当たり前のことを、当時のムードに流された民主党は忘れていたとしか思えない。

当時は、あたかも公務員は仕事をしない税金泥棒のようなバッシングにあった時期。マスコミは、まるで文化大革命を思い出させるような官僚叩きで視聴率や販売部数を稼いでいた。選挙で大勝した民主党は、「官僚から政治を取りもどす」とアピールして、さまざまな「変革」を試みた。民主党の主張には一理あったのだろうが、痛い目に遭って終わった。なぜだろうか。

官僚からとりもどすのは「政治」であって「行政」ではないはずだ。それを行政のアマチュアにすぎない政治家が行政実務の中に強引に入り込んでいったのだから、行政現場は混乱を極めたはずだ。予算は速やかに執行できず、「コンクリートから人へ」というスローガンは、経済学の乗数効果からみて疑問であるばかりでなく、国家行政の一貫性という命綱を損なう結果となった。

総理大臣がくるくる替わる国で、行政の一貫性が保たれなくなれば、その国は確実に弱体化する。外交上の約束は守られなくなって外国政府から相手にされなくなる、攻撃も受けやすくなる。経済についてはもっと悲惨だ。民主党は(官僚制の力を借りなければならない)経済成長には無関心だった。日経平均に言及した民主党の首相がいただろうか。

非営利組織でも同じことが言える。フロントラインには、医師(病院組織)や教師(学校組織)がクライアントと対面して、直接には、彼らのスキルがその組織の業績を決める。しかしバックオフィス(事務組織)の効率性や一貫性が保たれなければ、フロントの努力は無駄になってしまう。院長や学長が数年ごとに替わるたびに、方針を変更し組織風土も変わるような病院や大学に、誰が入りたいと思うだろうか。何十年も一貫した方針のもと、変わらない組織風土があるから、「何々大学らしい教育」とか「何々病院らしい治療方法」と評価されるようになる。

経営史と戦略論の大家、ハーバード大学のチャンドラーも書いている、組織には「たくさんの人が入り、世代が変わり、たくさんの人が去って行く、しかし組織は変わらない」と。政治家も経営者も、近代官僚制の能力を軽視してはならない。言い換えれば、組織というのはバックにいる目立たない「普通の人々」が支えている。大切にしなければならないのはそういう人たちなのだ、ということを得てしてトップは忘れがちになる。

*ジャズボーカルでピアニストでもあるDiana Krallが嬉しいことにビージーズをカバーしている。「傷心の日々」はビージーズの名曲の1つで、全米1位(1971年)となったが、英国と日本ではヒットしなかった。僕にとっては、彼ら特有の美しいメロディーラインが忘れられない。僕がこの曲にはまったのは中学時代で、旧友のビージーズファンが持っていたアルバム「トラファルガー」に収められていた。まだ海外に行ったこともなかったけれど、ビージーズの出身地オーストラリアに憧れたものだ。

ちなみにその旧友は、大学院を出て英国人女性と結婚し、ロンドンに渡って、英国第二の証券会社で大成功した。やはりビージーズがよかったのだろうか。「マッサン」ではないが奥さんの内助の功か。中学までの成績は僕のほうが良かったのに...


nice!(0)  コメント(1)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 1

松本詠司

同感です。政治の話はつまらないと感じています。分かりやすい文章でした。故浜田議員がTVタックルで「優秀な国家公務員が何十年も考えてきた事が政治家に分かる訳が無い」ってボヤイテいましたが、多くの国家公務員は泊り込み作業までして真面目に働いています。フロントとバックエンド
の関係は何処の組織にも共通する事と感じました。政治と
行政、行政マンの中には凄い方がいるもんだと感じています。
by 松本詠司 (2015-01-24 22:32) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。