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組織の中の人間(グローバリゼーション版) [経営学〔組織と戦略〕]

2009年8月6日(木)
20世紀後半の経営学、社会学、心理学には「組織の中の人間」についての文献が、一人の人間が一生かかっても読み切れないくらい蓄積され、日々なお発刊されている。視点やアプローチはさまざまだが、個人としての生の人間と制度としての組織、という構図は共通している。

時代の反映なのか、かつては個人が組織に飲み込まれるという研究が多かった。村上春樹を借用すれば「卵」が「壁、システム」にぶつかって砕け散る、そういう研究だ。
それから「卵」だって「システム」を上手に設計しさえすれば、活き活きと生きていけるし仕事も楽しい、という視点が加わった。どういう組織デザインがいいのかが検討されるようになった。

最近は「卵」が「システム」を部分的であれ、変えていこうという視点が強調されるようになった。いつまでも弱くて脆い卵のままではいられないというわけだ。「リーダーシップ」を発揮することで、システム=組織を変革してしまおうという趣旨。変革(transformation)など、現状を前向きに変えていこうというテーマが流行するようになった。マネジメントからリーダーシップへ、ミドルの役割は変わらなければならないという趣旨で、米国の市場型MBAでは変革論が大流行だ。

その趣旨はよくわかるし、意図も理解できる。もっともだと思う。

しかし、まともに信じることは僕にはできない。市場のニーズはその方向にあるだろうけれども、そうしないとMBAに入学者が減ってしまうだろうけれども、昨日まで言ってきたこととまったく違う理論を信じろと言われても、不器用な人間には難しい。

卵は壁にたたきつけられたら、マネジメントだろうがリーダーだろうが、ほとんど全部こなごなに砕けるにちがいないからだ。マインドマップだの意識変革だのと理論を押しつけられれても、卵はゴルフボールにはなれない。

その証拠に精神的な悩みを持つミドルや鬱病の社員がこんなに増えてしまったではありませんか。社会全体が、なんだかギクシャクして、ストーカー被害だの殺人だのが毎日のようにわが国のニュースとなってしまったではないですか。

卵は、誰がなんといおうと、卵でしかない。組織は卵を活用する壁の役割だけではなく、卵を守る役割もずっと果たしてきた。だからこそ卵は組織を信頼して働いて、貢献してきた。どうやって卵を活用できるかよりも、まずどうやって卵を守ることができるか、これが今日の組織論のテーマだと僕は思っている。

グローバル化によって、65億人の「地球村」グローバル・ビレッジはおたがいに近隣になった。一日2ドル以下の生活を強いられている人と、とてつもなく豊かな物質生活を送っている人が近隣者になった。企業や国家は、グローバルなレベルで卵を守らないと地球村に未来はないと思っている。市場主義の反対の意見だけれども。


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コメント 1

iwayan

こんにちは。

> 卵は、誰がなんといおうと、卵でしかない。組織は卵を活用する壁の役割だけではなく、卵を守る役割もずっと果たしてきた。

昔の講義を思い出しました。
以前から一貫している先生の視点ですね。
卵自身が、卵は卵でしかないことを忘れがちで、そこからもいろんな問題が生じるように思います。

願わくば、時々一部を壊してしまいながら、壊さないすべを学びつつ、しぶとい卵になりたいものです。
by iwayan (2009-08-08 07:13) 

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