企業文化・マインドセットの組織論 [経営学〔組織と戦略〕]
企業文化・マインドセットの組織論
2018年8月19日
近年、資源ベースの組織戦略論では「マインドセット」や「企業文化」のマネジメントに関心が集まっている。グーグルの人事担当上級副社長、ラズロ・ボックは「文化は戦略を食う」と言っている。マイクロソフトのCEO、サティア・ナデラも明確に述べている:
「私はCEOのCは[culture]のCだと考えたい。CEOは、企業文化の管理人だ」(ナデラ『ヒット・リフレッシュ』日経BP社、2017年)
なぜ、近年の組織戦略論では企業文化に焦点が当たるのだろうか?
(続き)
ヒントはナデラ自身が書いている。ナデラは「文化」という言葉は漠然としているが、彼がマイクロソフトのCEOとしてその言葉を理解するのは次のような文脈においてだという。
「私は文化を、個人のマインドセット、私の目の前にいる人々のマインドセットで構成される複合的なシステムだと考える。文化とは、ある組織の考え方や行動の仕方だが、それを形成するのは個人である。」(前掲書: 132)
こう述べた後、ナデラは「マインドセット」(キャロル・ドゥエックの用語)には「固定マインドセット」と「成長マインドセット」があり、前者は自分の制限してしまうが、後者は自分の能力を育て、前進させると述べている。最近の先端企業では、経営者は組織の従業員に成長マインドセットを望んでいるのだ。しかも強烈に。
こうしてみるとやはり疑問がわく。
米国企業は、1960年代をピークとする終身雇用型の安定した「オーガニゼーション・マン」(組織人)の時代から、石油ショックを契機とした企業のM&Aとリストラ、リエンジニアリング、ブルーカラーだけだったはずのレイオフがホワイトカラーを襲う時代の1980年代へ転落したあと、1990年代末から2000年代にかけてのIT時代、シリコンバレーの時代でみごとに復活していった。
この間、雇用者は安定したサラリー制度から成果主義・業績給に転換され、近年でも結果を第一に考えるシステムはますます確立してきた。
それなのになぜ経営者たちは、「企業文化」や「成長マインドセット」などといって時代錯誤なモットーを訴えるようになったのか。なぜ従業員たちの業績だけを評価しないのか。組織のなかに「共通の価値観」があろうがなかろうが、マイクロソフトやグーグル(アルファベット)の業績に何の関係があるというのだろうか。
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