You Never Give Me Your Money (The Beatles) のこと [ジャズ日記]
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The Beatles/ Abbey Road/ 1969.
2014年8月13日(水)
ビートルズの実質的な「白鳥の歌」(白鳥は死ぬときに美しく鳴くという)となった「アビーロード」。 古いアルバムだが、今聴いても少しも古くない。
誰でも一度は聴いたはずのアルバムだ。今日は、前からずっと好きだった「You Never Give Me Your Money」を紹介したい。
You Never Give Me Your Money
この曲を作った当時、ビートルズは解散直前だった。それぞれが「ビートルズ」に満足できなくなっていた。ポールが「原点に戻ってやりなおそう」という呼びかけをした。これが「Get Back」Sessionだった(「Let It Be」として1970年にリリースされた)。でも他の3人は乗ってこない、それどころか契約でもめごとがあったらしい。
高校生だった僕は、この曲は離婚を題材にしているのだろうと思った。あまりにも美しいメロディーにのせてこんな歌詞が歌われる。
僕は君に電話番号を教えない
次に「大学出ても、家賃も払えない」とか「どこにも行く当てがないよ」が続く。
アビーロードのころのビートルズ
「アビーロード」のB面は最高傑作という評価と「ジャンクの寄せ集め」(ジョン)説があるが、いずれにしろ世界を制したスーパーチームがもはや画期的なイノベーション(新しい音楽)に見切りをつけて、それぞれが別の道に分かれようとしていた傷跡は読みとれる。
評論家によれば、ビートルズの成功は、4人がともに個性を活かしたことにある。たとえばローリング・ストーンズ、ミックとキースがコアメンバーとして固定されていて、その他は出入りがある周辺メンバーだった。もちろん、ビートルズもレノン&マッカートニーが曲を作るコアになるが、ジョージにもヒット曲があり、リンゴも制作に積極的に関わったという。彼らはつねに4人で平等に力を出して制作してきた世界最高のイノベーション・チームだったのだ。だからこそ「アビーロード」当時は、本来のビートルズはもはや存在しない。
クリエイティブなチームでなくなった人間集団は、「おかしな紙切れ(funny paper)」と「言い訳(situation)」によって媒介される平凡な組織に堕すことが常だ。その場合、解決策はもちろんないから、堂々巡りする長い交渉のさなかに誰かが崩れ落ち、誰かが精神の均衡を失って壊れてしまうのだ。
こんな人間関係でつながった集団や組織こそ悲劇だ。すべての人間関係の最悪のケースがここに歌われている、しかもこのうえなく美しい。やはりこのアルバムはビートルズの「白鳥の歌」なのだろう。
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