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投資ブームと2つの質問 [マネー]

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The Bee Gees/ One Night Only.1998

投資ブーム

2013年3月15日

 昨年暮れから、金融業界の「アベノミクス」効果が意外なほど持続していて、このごろではかつての「小泉改革」効果と比べられている。
 円安、株高トレンドを指をくわえて見ていられないのが個人投資家だ。小泉改革というか竹中改革が喧伝したのが「貯蓄から投資へ」だった。個人投資家はこれに乗せられて株に投資し、中途半端な規制緩和のままリーマンショックに大打撃を受けた。彼らは大部分、塩漬け株を抱えて含み損に身動きがとれなくなっていた。

 アベノミクス効果で株が上がっていくのを、彼らは指をくわえて見ているわけにはいかない。なにしろ含み損を抱えているのだから。さあ何とかするぞ、とばかり株式市場に再参入してきている。
 東証一部の売買代金を見ると、個人の割合はアベノミクス前は12パーセント強だったが、今年に入ってから、ついには25パーセントをこえた(東京証券取引所)。「持たざるリスク」が日本株について発生しているとまで言われるようになった。
 カブドットコム証券の発表では、1月の新規口座開設数は12月の2倍に増えた。1月から信用取引の制度が改正されて、個人のデイトレードがやりやすくなったことも貢献している。こういう規制改革はいいことだ。しかし喜んでばかりもいられないようだ。

 「外国人が買い、日本人(信託銀行、保険などの金融機関)が売る」という日本株動向をみると、直近には外国人の動向が気になるところだ。四月から五月にかけてのアノマリーで、これから日本株は調整に入る時期に直面している。少なくとも短期的に安くなっていくだろう。
 外国人投資家の中でも、短期投機を専門とするヘッジファンドは、いつの日か急激に売りに転じることは目に見えている。年金基金などの長期保有の外国人投資家はようやく日本株に関心を示してきた段階だ。彼らはそう簡単にポジションを転じない。
  つまり、長期投資家が本格的に日本株を買いに来る前に、ヘッジファンドが売りに転じると、その日が「アベノミクスの崩壊」のスタートになる可能性がある。 そうなると高値づかみをさせられた(またしても!)個人投資家が、塩漬け株を大量に抱えて新しい「失われた10年」に突入することになる。
 この シナリオも、一応は想定しておくべきだろう。だからこれからの利確はていねいにおこなうべきだ、「バイ&ホールド」なんてとんでもない。思い出してほし い、二月に日銀総裁のことで武藤氏に決まるという発言が流れただけで、あれだけ円は買い戻され、株は下がった。実体経済がともなわない段階での相場はかく も不安定で先が見えず、投資家はブレーキに片足を乗せながらアクセルを踏んでいるのが実態だ。
 最近、「日経平均4万円」という著名エコノミストの予想が出たが、僕はまだ浮かれるのは(個人投資家にとって)危険だと言いたい。個人投資家は自分の財産を守ることを眼目とするからだ。

投資の心構え:2つの質問

 さて、心配なのことはもうひとつある。このブームは余裕資金のある層ならともかく、学生まで拡大しつつあることだ。円ドルの組み合わせでFXを始める学生も少なくない。
 なかには80万円儲かりましたという人もいる。レバレッジを効かせるから、少ない元手でも大きな利益が得られる。日経先物のように難しくはない。金融や投資に興味を持った優秀な学生が惹かれるのも無理からぬことだ。

 そんな学生たちに2つの質問をしてみたい。

  • 「クリスティアーノ・ロナウド(レアル・マドリード所属)やウェイン・ルーニー(マンチェスター・ユナイテッド所属)や香川真司(同)と対戦して、あなたは勝てそうですか?」

 まず、投資に参入したい学生には、この質問をしてみたい。
「じょうだんじゃないよ、ボールにさわることもできない。あたりまえでしょ」
というのが一般学生の返事だと思う。まずここから始めよう。

 どんなゲームでも、プロとアマはあり、その境界には高いハードルがある。
  しかし、投資の世界にはプロとアマはない。1つの通貨や株に投資した瞬間、ウォールストリートのロナウド君やルーニー君なみのスタープレーヤーとあなたは 同じピッチに立っている。もしその投資があなたの「カン」や『月XX万円儲かる投資入門』などの知識だけでエントリーしたとしたら、残念だけど、結果は見 えている。ロナウドやルーニーたちに食い物にされて、資産を失い、このゲームから退場していく。
 実際、FXの場合、1年以内で半数が退場すると言われている。株の場合は信用取引と現物取引で退場率がちがうが、9割は敗者になるゲームであることはよく知られている。

  プロから見ると、大量の素人が参入してこなければ稼ぎようがない。だからプロは前もって、信じられないような底値で仕込んである銘柄を雑誌で推奨したりす る。これをポジション・トークという。アマが乗せられて買ったところで、自分は売り抜ける。高値づかみをしたアマの大群が残される、というシナリオはこれ まで何度も繰り返されてきた。
 さあ、勇気を出して持ち金を投入してみますか?

  • 「投資スタイルは決まっていますか?」

 それでもやってみたい? では、これが次の質問。
 あなたはアルバイトして20万円たまりました。さっそく投資して10倍に増やしたい? けっこうなことです。ファンダメンタルズでやりますか、チャーチストですか? 
 「何それ?」

 ちょっと待ってください。企業業績の基本的な見方がわからずに、株に投資するのですか? マクロ経済の基本を知らずに為替相場に投資するのですか? 自分の資産を失う前に、まずしっかり勉強しましょう。ファイナンスや経済学の教科書は、読みやすいものが増えています。
 今日は『会社四季報』の発売日ですが、個人投資家のなかにはこの日は会社を休んで週末にかけてじっくり勉強するという人たちもいる。チャートの読み方がわからないなら、トレンドが見えないわけで、6ヵ月かけてためたアルバイト代を失うのは10分もかからない。

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 たとえば上の図をみてください。リスクオンの対象は価格のヒストリカル・ボラティリティ(変動率)が大きいから、リターンも大きくなる。元手を10倍、100倍にしたという個人投資家がいるのもそのためです。ここでは初心者がはまるパターンをみましょう。

  Cは新高値です。個人投資家はB点で買付て、C点で売却できれば百点満点です。でもほとんどはそうはいきません。Aまで上がったときに、日経新聞の投資欄 やネットでニュースになっているはずです。何かの材料があったから、この銘柄はAまで高くなりました。たいてい個人投資家はAでいそいそと買い付けます。

  そこでプロや仕手筋はAで売り抜けます。その前に底値で仕込んであった彼らは利益確定したわけです。一方の私たちはどうするかというと、買ったとたんに下 がっていく株価を呆然として見ているだけです。数週間か数ヶ月か、とにかく一定期間を過ぎても下がり続ける株価にしびれをきらしています。そこに何かの材 料が出てBまで下がります。

 この時点で、素人の私たちはいいようもない恐怖感に襲われるのです。もしかしたら新聞に書いてあるように倒産 の危機もあるのではないか、メインバンクが見放すと書いてあったが、やはり台湾企業の出資が決まらないともたないのだろうか、などと絶望的な焦りがおそっ てきます。たいていの場合、恐怖に耐えきれず、Bで売却します。どんなに精神的にタフな人でも、購入価格のAまで値が戻ったらホッとして手放します。それ 以上待つことは難しい。これを「ヤレヤレ売り」と言います。(もちろん先に利益確定したプロはBでまた買います)

 こうして高値づかみをした私たちは底値で恐怖に負けて損切りします。これではいくら資金があってもすぐになくなって市場から退場してしまいます。ゲームセットです。(プロはCでまた利益確定するのです)

 こういう初歩的な破産パターンに陥らないためにどうしたらいいか。自分の投資スタイル、世界観、哲学と方法論を身につけるしかないと思う。
 自分の目的にあった投資スタイルを見つけるまでは、勉強を重ねてください。きっと企業のファイナンスだけでなく、ヨーロッパの政治経済やアメリカの財政や中国の政治経済がどれくらいあなたの投資にとって重要なファクターになっているかがわかってくると思います。

  勉強は、少額投資と並行して行うといいでしょう。人間、自分のお金がかかっているとものすごいパワーが出てくるので、朝も自然に目が覚めてワールドニュー スや海外の先物価格などをチェックするようになるでしょう。英語の経済記事も読めないと投資できないので、自分で勝手に勉強して、FTなどが読めるように なります。あくまでも自分にとって、全部なくなってもがまんができる額、少額投資で始めましょう。

*写真:ビージーズの名盤。子供の頃からオーストラリアの聖歌隊で鍛えられた兄弟のハーモニーが美しく、モーリス・ギブ亡き後、再結成はない。昔からのフアンとして惜しいと思う。ギター一本で昔のヒットソングをメドレーで歌うところがあり、これがまたすばらしい。


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