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生と美

生と美

もう何年も前になる。ある研究会の友人が、その日の研究会が終わってから、2次会か、そのあとのホテルのロビーでのコーヒータイムか、もう疲れ果てていた時間にポツリと言った。「僕も君のように生きればよかった」

そのとき僕は、半分お酒の勢いを借りて、人生において美というものがいかに大切か、などという生意気なことを説いていたと記憶する。 実際、美のために人生を生きているヨーロッパの友人を少なからず知っているからだが、僕自身が彼らのように真剣に美のために生きられる勇気があるわけでもないのに。

 

その友人は、とてもややこしくて重い病にかかっていたことをあとで知った。 彼の専攻はドイツ哲学だから、その反応を僕は、彼の専門的な文脈でしか理解しなかった。

今も彼は病気と闘っている。僕の言った「美」が、彼の感じたそれと同じ概念である保証はないけれども、僕には今は彼の気持ちが理解できる。それは風景にも、音楽にも、詩歌にも、論理体系にも、存在する美なのだ。もちろん、生きている人間にも。

 


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