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「歩く人」の美しさ [ジャズ日記]

8月30日(土)晴れのち雷雨

Homo ambulare. 他人が歩く姿を、こんなに意識してながめるとは。リウマチ関節炎になって、まったく歩けなかったり、杖をついて歩いたり、棒足で膝を曲げずに歩いたり、とにかくまともに歩けなかった時期が6週間あまり続いた。そんな時、痛さで道ばたに立ち止まり、他人が歩く姿を見ていた。なんて軽々と、さっそうとして、まるでどこまでも行けるように歩くのだろう。感銘をうけた。

大学院時代、ヨーロッパに留学したとき、最初の感銘がやはり彼らの歩き方だった。ドイツ人もフランス人もみんな背中をすっと伸ばして、長い足をゆっくりと使って歩いていた。アジア人は比較的、猫背にして、早歩きをしているが、ヨーロッパ人は優雅に歩いていた。その美しさに感銘を覚えた。

 

26歳の時、生まれて初めて海外に行った。4ヶ月間、半分はドイツ語を勉強するための時間に、半分はドイツ語学校で知り合ったヨーロッパの友人の町を旅行するために使った。それは翌年予定していた本格的な留学の準備期間だった。

ドイツ語の学校が終わってから、友人になったスイス人の小さな車で、北ドイツからスイスの田舎町まで半日かけて行った。初めてのスイスで、僕はアルプスの美しさに圧倒された。町も美しかった。なによりも圧倒的な自然の美しさのなかで、それをあたりまえにように生活している人々の暮らしに驚いた。友人が探してくれた小さなペンションに数日滞在していても、僕はその自然の美しさに「あたりまえ」にはなれなかった。

山の天気は変わりやすい。しかしその町の人々は、男も女も、雨が降ってきても傘をさしたりしなかった。ジャケットの襟を立てて、ポケットに手を突っこみ、髪の毛をぬれるままにしてさっそうと歩いていた。 歩いている人があれほど美しく思えたことはなかった。

 


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