SSブログ

中国株式市場のブラックマンデー [マネー]

中国株式市場のブラックマンデー

blog-2015-08-30.png


The Carpenters. 1973. Johnny Angel.

2015年8月30日(日)
最悪の夏休みと言うべきか。皆さんも眠れない日々を過ごしていたのではないだろうか。8月24日(月)、マーケット・クラッシュの震源地、中国の新聞新華社は「黒色星期一」(ブラックマンデー)と書いた。当日、上海総合指数は8年ぶりの下落率だった。

 

やや時間が過ぎて市場も小康状態の今、いろいろな「犯人」候補があがっている。米商品先物取引委員会(CFTC)の集計によれば、19日から25日までのヘッジファンドは4年半ぶりの大規模な円買いを行った(日経新聞、2015年8月30日)。彼らは、急激な円高を利用して年内に実施される予定の米金利上げで大もうけを図っている。

しかしヘッジファンドが「真犯人」ではないと思う。また、職業柄、心配になるのは若い投資家が致命的な痛手を負ったとも聞くことだ。そこで、今日は落ち着いてデータの整理と対策を考えてみたい。

 

【データ】
8月26日(水)終値をいったん底とすると、上海総合指数は2,850ポイント、ついに3千を割った。これがどういう意味なのか。昨年に話を戻す。
2014年10月27日、これまでどおりの2,279ポイントだった上海は、11月にラリーに入り、今年の1月23日、3,406ポイントまで49パーセントもの急騰をした。そのきっかけは政府、11月の金利引き下げだった。

2月9日に3,049まで10パーセント下げたころ、ふたたび政府が動く。
手元の手帳によると、2月4日(水)夜、中国人民銀行は預金準備率を0.5パーセント引き下げると発表。これで6,550億元(12兆3千億円)の流動性追加が見込まれた。この時点でもマーケットには、製造業の供給過剰、不良債権問題など中国経済に対する懸念はぬぐいきれないでいた。しかしその後も買いが買いを呼び、中国株価はラリーを続ける。

その後、短期の調整をへて、6月12日(金)に最高値、5,178ポイントをつけたあと(上のチャートで、いちばん山が高いところ)、中国株価は急落する。
7月9日(木)、3,374ポイント。ここで政府の力でいったん反発。ただし200日平均線でのマーケット的な反発とも解釈できる。
7月24日(金)、4,184まで上昇、売りに押されて、7月28日(火)は3,537ポイントまで下げる。ここでも200日平均線が下支えになる。しかもまだ200日線はゆるやかだが上昇中トレンド。このあたりでは75日は少し下降を始めている。

そして今回の局面、8月18日(火)の4,006ポイントまで回復した後、リーマンショック以来のクラッシュが起こった。いっきに8月26日(水)、2,015ポイントまで落下。いったん底をみたと仮定して、直近の二日間は自律反発中。


【解釈】
3千ポイントを割るということは、今年に入ってからの中国政府の金融政策の全否定を意味する。中国の上場企業にはそんな実力はないのに、政治の力でマーケットを故意に動かした、マーケットはそう言っている。

今後、もし2,300ポイントまで下がるとしたら、その前、11月の政策も含めて否定されることになる。その日はくるだろうか。

マーケットを信じすぎるのが経済学理論なら、マーケットを甘く見すぎるのが集権国家だ。グローバル化したと同時にコンピューター化して超高速取引がニューヨークの50パーセント、東京の40パーセントを占める今日のマーケットを軽視するととんでもないことになる。
市場に対する政治権力は長期的には中国国内でも奏功しないだろう、まして、世界のGDPの三倍もの資金がまわっているグローバル金融市場では、政治権力はむしろ「実態を見せない力」というリスクファクターに他ならない。このことがはっきりしたのが今回のクラッシュだった。

【対策】
問題は、これを中国政府がどれくらい学習するかどうかだ。もはや面子にこだわっている場合ではない。財政出動をすれば習近平の引き締め政策を緩めることになるが、むしろ臨機応変に政策を変えるのが政治家の勇気というものではないか。バブルや賄賂に帰結しない財政出動をすればいい。非伝統的な金融緩和政策にも踏み込むべきタイミングだという論者もいる、中国発の世界恐慌はみたくないというのが世界の共通認識だろう。とくに中国と関係が深い東南アジア、オーストラリアなどは今の深刻な状況からともかく脱したいというのが本音だと思う。もちろんだが豪ドルも不安定だ。

【個人レベルの対策】
僕はなんとか生息してるが、いちばん気がかりなのは中国の大学生投資家たちだ。報道によると、学費を稼ぐために金融機関から借金して株式投資をしていた若者も多いという。こんなクラッシュ時に備える対策はほんとうは基本的なことだ。

ひとつは、信用取引をしないこと。信用では、今回のようなクラッシュ時に追い証が発生し、強制決済が避けられない。信用取引で、自らの財力以上の取引をしていた人は、お気の毒だが、レバレッジの分だけマイナスも大きく、投げ売りで痛手を被ったことだろう。投資は余裕資金で行う、これはどの本にも書かれている基本中の基本だ。

今回はFXで深みにはまった人も多いと予想される。米金利上げのタイミングばかり気にしていたマーケットのすきをついたのが冒頭に書いたヘッジファンドだ。ドル円がまさか216円になるなんて誰も考えもしなかった。

二番目は、クラッシュもラリーも慌てないことだ。信用取引でレバレッジをきかせている人は、こういう時に焦ってしまう、だからこそ信用はよくない。また、キャッシュ比率が低い投資家も焦りが出る。いつも自分のポートフォリオを微調整する習慣をつけたい。

投資先の分散はきいているか、キャッシュ比率は低すぎないか、内需と外需銘柄、外国株と日本株、国債と株式などのポートフォリオにはつねに配慮したい。「ひとつのカゴにすべての卵をのせるな」。

まとめると、たとえば今回のクラッシュに直面して、ベストシナリオは全資産をすべてキャッシュに戻しておいた投資家だ。彼は夏休みのバーゲンセールを心から楽しんだことだろう。つい一週間前まで手が出なかった銘柄が、うそみたいな価格で買えるのだから。

ワーストシナリオは、クラッシュの直前にすべてを中国や資源関連の銘柄につっこんでしまった投資家だ。買ったとたんに暴落を始めた彼の資産は、あれよあれよという間に下落していった。もちろん下落が早すぎて損切りする心の余裕すらなかっただろう(指し値をしていなければとても売れなかったはずだ)。

たとえば代表的な中国関連銘柄の小松製作所をみると、8月11日(火)、2,367円から8月26日(水)、1,891円へと一週間で2割も暴落している。この動きは中国をお客様にしている国にも連想を呼び、オーストラリアで強い自動車のマツダも同様の急落を見せた。

こんな状況では、買う側と売る側で勝負がついている。ファイナンスで言う「キャッシュ イズ キング」を思い出す状況だ。

三番目の対策として、キャッシュをいつも50パーセント程度は保有していることをこころがけたい。つまり、余裕資金で、レバレッジをきかせずに、実際の購入はマーケットがクラッシュしたときにする。これが基本になる。そのためにはチャンスを待つこと、良い企業を見分ける目を持つこと。決して「誘われてフラメンコ」を踊らないこと。気がついたらフロアには自分一人で、店の照明も消えているだろう、今回のように。ヘビのように聡く、が投資というものだから、そういう人格に自分を鍛えることだ。

ともかく、まずは9月初めの雇用統計を祈りを込めて待つほかない。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。