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グラットンとピケティ(その1) 格差社会論 [グローバル経済]

グラットンとピケティ(その1) 格差社会論

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グラットン(ロンドン・ビジネススクール教授・経営組織論)とトマス・ピケティ( パリ経済学校教授・経済学)を読んでいる。この二人は、今日のヨーロッパを代表する論客だ。彼ら(彼女と彼)は、キャリアと世界観については対照的な人である。

ピケティ(Thomas Piketty)は親の代から社会党支持者のアカデミックな研究者であり、グラットン(Lynda Gratton)は経営コンサルタント出身で、今もシンガポール政府のアドバイザー等を続けている。ピケティが批判した「1対99パーセント」の構図でいえば、グラットンは「99」の側にはいない。しかし、グラットンの主張にはピケティと共通点もある。そこが面白い。

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グラットンの『ワークシフト』が海外書評で評判になったとき、とりあえずキンドルで買っておいた。そのまま読まないでおいたが、旅行中に飛行場の待合室や機内でキンドルで読み軽い衝撃をうけた。アメリカの経営コンサルが(一般論ではあるが)総じてノウハウ的な本に終始するのはよく知られた事実だ。僕はこの傾向を「短期本」と呼ぶ。それなりの学びはあるが、短期現象にしか通用しないのが悩みの種なのだ。
 それに対して、ヨーロッパのコンサルがこれほど深い教養と独自の世界観を持っているとは知らなかった。正直、この違いはどこからくるのだろうと思った。それともグラットン個人の教養なのかもしれない。

まず『ワークシフト』巻末の文献リストをみて、僕はグラットンが古くからの友人であるかのような懐かしさを覚えた。それと同時に最先端のマネジメント文献がちりばめられていて、「経営組織論の世界的権威」と言われているだけの力量を示している。長い飛行機の中で文献表を眺めているだけでも退屈しなかった。

ピケティの『21世紀の資本』は世界のベストセラーなので、今さら紹介するまでもないと思う。彼の世界観から、ウォールストリートがメインストリートよりも利益を上げていること、しかも法外な利益を上げていることは是正すべき政治案件となる。ピケティの本も海外メディアで騒がれたときにキンドルで買っておいた。

経営者を「managers」とか「super-managers」とピケティは呼ぶ。彼らの生活レベルは、庶民とは離れすぎている。ウォルマートの従業員が年間2万5千ドルで働いているのに対して、巨額の報酬を得るトップ企業の経営者たち。たとえばアップル社のCEO、Tim Cookは2011年に3億8千万ドルの報酬を得た。これはアップルの平均賃金の6千258倍に相当するという。

「1対99パーセント」のウォール街の占拠に理論的根拠を与えたピケティは、現代の格差構造をデータによって浮き彫りにした。ある若い友人にその話をしたら、「所得に格差があってもいいではないか、一般社員と経営者の貢献度、努力、才能はそれくらい異なるはずだからむしろその格差は当然だ」という。

なるほどそういう考え方も理解できる。では、次のデータはどうか。

ピケティによると、1950年代の米国では、大企業の経営者と一般従業員の賃金格差は約20倍だった。現在、アップルは別格としても、「Fortune 500社」の一般社員と経営者には200倍以上の格差がついている。この半世紀で、経営者の所得は一般社員よりも10倍増えたことに経済合理的な説明がつくだろうか。

たとえばこの半世紀で、経営者の能力や貢献度は一般社員よりも10倍増加した、という説明は合理的で納得できるものだろうか。

 


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