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シャープと日本柔道の没落 [経営学〔組織と戦略〕]

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Milt Jackson Quartet/ 1955

2012年8月19日(日)
オリンピックの結果が明暗を分けた。象徴的な言い方をすれば、柔道で負け、サッカーで勝った。これは日本の伝統的に強かった企業・業界とこれから伸びる業界の明暗によく似ている。

柔道と言えば、日本のお家芸。選手たちは皆、悲壮な顔で闘っていた。銀メダルでも笑い1つこぼさなかった。金でなければならないという痛切な期待が、20代の若者たちにとってどれだけプレッシャーとなったことだろうか。その心理を思うと胸が痛む。

対照的に、女子サッカー、水泳、フェンシング、ボクシングなど、何十年ぶりでメダルをとった競技の選手たちの明るさとはしゃぎぶりが目立った。肩から力が抜けて、オリンピックを楽しんでいる様子だった。

心 理面のプレッシャー以上に、日本柔道を低迷させたのは、競技がグローバル化したことだった。あくまでも一本勝ちにこだわる面子の柔道、つまり「道」として の日本柔道は、レスリングのようにポイントを稼いで逃げ切るというグローバル・スタイルのJUDOとは相容れないままだ。日本柔道が自分のやり方に固執す ればするほど、グローバルに標準化されたデファクト・スタンダードのJUDOは勝ちやすかったと思う。

グローバル化に翻弄されて、本来持っ ている資源を生かし切れずに迷走を続けているのが日本の家電業界だ。ソニー、シャープに象徴されるだろう。とくにシャープは、鴻海の出資を受け入れること に決めてからのグズグズと株価低迷が毎日のようにニュースになっている。経営陣の無策というのだろうか、1株主の声としてはもうそろそろ何とかしてほしい というのが正直なところだ。

ソニーもシャープも伝統的な強みを持つ日本の電機、完成品メーカーだった。すぐれた製品力は、自社グループ内で コア人材がコア部品を作り、すぐれたインテグラル、すりあわせの組織能力によって魅力的な完成品を世に送り出してきた。ソニーもシャープの亀山ブランド も、ついこのあいだまではプレミア価格を享受できていた。

要するに、垂直統合型のものづくりから水平分業型にグローバルな環境がシフトして いるときに、シャープは日本柔道と同じように自分のスタイルを貫いて、大規模な投資をし、それが利益をもたらす前に、自社製品のコモディティ化が進み、利 益を生まなくなった。今では、水平分業型の代名詞、鴻海からの出資に依存せざるをえない。

日本の電機と言っても、iPhoneで儲かる電子部品メーカーから重電メーカーまでさまざまなので、一言ではその競争優位を語ることはできないが、シャープのような家電メーカーについて言えば、柔道がJUDOに負けた姿と重なるのをどうしようもない。

再 生の道は残っている。最近発表された、亀山工場や米国工場をはじめとする事業のポートフォリオの見直しやリストラも必要だろうが、本質的な道はグローバル 環境に適合することだ。近い将来の復活を期待したいし、それだけの資源があり、じゅうぶん可能だと思う。 がんばれシャープと日本柔道。


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