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ベニスの日差し [旅行]


ベニスの日差しは、ドイツとはちがう。
いや、ローマやミラノともちがう。ここにしかない、水面の照り返しをうけた強烈な日差し。それをイタリアならどこでも見られる、あの緑色の日よけで、それをなにごともなかったようにかわしてしまうベニスの人々。ここを訪れるたびに感服する。

 

1786年9月28日、夕方、初めてここに着いたゲーテは「群衆」に圧倒された。
前回、ベニスに立ちよったとき、僕も同じように「人、人、人」に圧倒され、気分が悪くなってホテルでしばらく休んだ。200年前と変わらず、ここは観光客であふれている。

来るたびに、もう来ないと思うのに、また来てしまう。
ミラノは淑女、ベニスは悪女に似ている。トーマス・マンは悪女に魅入られた知識人の話を書いたのだ。邪悪な情熱に人生を滅ぼされていく理性の姿が『ベニスに死す』のライトモチーフだ。

太宰治風の作家が容易に甘美さに流されていくのに対して、マンは最後の最後まで情熱に抗おうとしている。必死に抗うからこそ、なおも崩壊していくことがあそこまで哀しいのである。


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