イタリアのトラック

20代のころ、一人旅でイタリアの小さな町に友人を訪ねたことがある。
そこはスイスに近いアルプスの町だった。
小さな駅で降りると、彼女は案の定（イタリア人らしく）、待ち合わせ時間にはいなかった。
しばらく樹木の影でベンチにすわって、アルプスの山並みと青空を眺めていた。暑いが、木陰はからりとした涼しい風がふいていた。

そこに緑色の小型トラックが駅前の広場に来た。２０歳くらいのひょろっと背の高い青年が、母親としっかり抱き合ってから、その荷台に乗り込んだ。ホロを上げたとき、僕は数人の同じような青年たちが荷台に座っているのをみた。後から友人に聞いたら、それは軍隊に行くトラックだった。 ミラノの中央駅はたくさんのドラマをみてきたはずだ。